みなさま、こんにちは。
このページでは、
「定期賃貸借契約」についてご説明いたします。
「定期賃貸借契約」は、通常の賃貸借契約と違い、
あらかじめ「契約期間」と「更新しない旨」を定めて契約するもので
「立ち退き」に関して「貸主」が主導権を持つことのできる契約形態です。
定期賃貸借契約とは、
「期間を定め」た上で
「更新がない旨を定め」た
賃貸借契約のことです。
借地の場合は、「建物の建造による存続期間の延長」や「建物買い取り請求」をしないことを定めます。
定期賃貸借契約では、
更新がないことを前提とした契約ですので、
期間が経過すれば、正当事由がなくても借主は明け渡さなければならなくなります。
「定期賃貸借契約」は、借主保護を緩和したものと言うことができ、
貸主側が一定期間経過後には使用する予定がある場合などに用いられます。
なお、貸主の側から契約を更新するよう提案し実際に更新することは問題ありません。貸主にとっても借主にとっても不利益とはならないからです。
通常の賃貸借契約の場合、
「期間の定め」があったとしても、それは更新されることが前提となっています。
ですので、賃貸人(貸主)側の理由で「更新しない」のであれば
が必要となり、
しばしば立退料の「額」が問題となるのです。
一方、「定期賃貸借契約」では
「更新しないことが前提」となった契約ですので、
貸主の「正当事由」は必要ありませんし、「立退料」も不要です。
「借主保護のための借地借家法」において、
これを緩和する「定期賃貸借契約」には、一定の要件が課されています。
借地権の場合は、
通常の土地の賃貸借契約の期間は30年以上でなければならないとされていますが、
定期賃貸借契約の場合は、原則として50年以上の期間でなければなりません。
(一般定期借地権)
ただし、土地上の「建物を地主さんが相当価格で買い取る」ことで賃貸借契約を終了させる「特約」をつけることで、期間を30年以上とすることができます。
(建物譲渡特約付借地権)
また、賃貸借の目的を「専ら事業用途である」こととすれば、建物譲渡特約がなくても期間を30年以上50年未満とすることができますし、
「公正証書で契約」するのであれば、10年以上30年未満とすることもできます。
(事業用定期借地権)
借家権の場合は、公正証書等の書面で契約をする限り、期間の制約はありません。
ちなみに、通常の賃貸借契約は期間を1年未満とすると期間の定めのない契約となりますが(借地借家法29条1項)、定期借家契約では、設定した期間までとすることもできます。
貸主側は、「当該契約が定期賃貸借契約である旨」を説明したうえ、
「その旨記載の書面」を、交付する義務を負います。
さらに、定期賃貸借契約を締結するにあたっては、
「公正証書等書面」によらなければなりません。
公正証書とは、公証役場において法律の専門家である公証人が作成する書面のこと。
(公正証書は、判決がなくても強制執行することができます。)
もっとも、公正証書は費用もかさむことから通常は契約書を作成することで足ります。
このように「定期賃貸借契約」は、一定の制約がありますが、
借主保護が強い借地借家契約においてこれを緩和させる形式の契約です。
実際、借主側としては、
退去トラブルを避けることができるうえ、立退料の支払いもないことから多くの利用があってもよさそうですが、
国土交通省による平成26年度住宅市場動向調査によると、
定期借家契約は、通常の借家契約の3.2%となっており
その大半が通常の借家契約であることがわかります。
また、「定期賃貸借契約」を
「知っている」人
・・・ 11.2%
「名前だけは知っている」人
・・・ 30.7%
「知らない」人
・・・ 57.5%
と、そもそも認知されていないというのが現状なうえ、
過去と比べても認知度が上昇していないという状況です。
Copyright © 2024 弁護士法人エース All Rights Reserved.
東京都中央区銀座6-3-9 銀座高松ビル9階 0120-905-959