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立退料とは?

そもそも立退料とはなんでしょうか?
なぜ、立退料が問題となるのでしょうか?

立退料とは

立退料とは、賃貸人(貸主)が賃借人(借主)に対して賃貸借契約の期間を更新しない場合に必要とされる「正当事由」を補完する意味合いを持つ補償金です。

賃貸借契約は、更新が前提です

そもそも土地建物の賃貸借契約は、期間の定めがあったとしても、
法律上、更新されることが原則となっています。

たとえば2年の期間を定めて契約をしたとしても、そのまま2年経てば契約が終わるわけではなく、そのまま何もしないでいると、
従前と同一の条件(ただし期間については定めのないものになる)で
賃貸借契約が更新されたことになるのです(法定更新)。

賃貸人(貸主)がこの法定更新を拒むためには、

  • 賃貸借契約の期間終了1年前から6か月前までの間に
    更新をしない(更新拒絶)という通知を出すこと
  • その更新拒絶に正当事由があること

の両方が必要です。さらに、

この2つが揃っていたとしても、
契約期間満了後に賃借人(借主)が建物を使用し続けているのに賃貸人(貸主)が直ちに異議を述べないときも、法定更新されてしまいます。

更新拒絶の「正当事由」はとても厳しい

更新拒絶の「正当事由」はかなり厳格に判断される傾向にあります。
単に賃貸人(貸主)が使いたいというだけでは認められないのです。

そのため、賃貸人(貸主)としては、立退料を支払って土地建物を立ち退いてもらうということが昔から行われてきたのです。


立退料はかならず必要?

では、立退料は、必ず必要なのでしょうか?
立退料が不要となるケースはあるのでしょうか?

明け渡しを求めるなら、立退料はほとんど必須

賃借人(借主)に重大な契約違反がない限り、立退料はほとんど必須、とお考え下さい。

法律上、賃借人(借主)の地位は強く保護されています。
賃貸人(貸主)から一方的に賃貸借契約を解除したり更新拒絶したりすることはできません

立退きには、賃貸人(貸主)が更新拒絶をする「正当事由」が必要となるのですが
立ち退き料は、「正当事由」を基礎づける1つの重要な要素として考えられます。
つまり、立退料を支払う方が正当事由があるという方向に傾きますし、その額が多いほど正当事由ありと判断されやすいのです。

また、厳密には立退料を考慮しても正当事由ありといえない場合でも、
賃借人(借主)が納得してくれれば合意によって立ち退いてもらうこともできますので、
賃貸人(貸主)としては、まずは賃借人(借主)との合意を取ることを目指して立退料の交渉をしつつ、どうしても合意形成が難しい場合に「正当事由」の主張をしていくことになるでしょう。

立退料を積んでも、立ち退きが認められないことも?

ですが、いくら高額な立退き料を積んでも正当事由が認められないケースもあります。
(詳しくは、⇒「立退きと正当事由」のページをご覧ください。)

賃借人(借主)に対する法律上の強い保護に対して、賃貸人(貸主)ができることとしては、予め、

  • 契約形態を定期賃貸借契約にしておく
  • 解約権留保特約条項を入れておく
    「賃貸人は、契約期間内においても解約申入れをすることができ、この解約申入れがされてから6か月経過後に契約は終了する」等の契約時の条項

などがありますが、後者についてはそもそもその有効性に問題があるほか、有効だとしても正当事由が必要だとされますので、あまり効果的とはいえないかもしれません。

賃貸人(貸主)として、どうしても更新の主導権を持っておきたいのであれば、法が用意している定期賃貸借契約という契約形態によるほかないといえます。
(詳しくは、⇒「定期賃貸借契約」のページをご覧ください。)

立退料の額が争点になるケースがほとんど

また、上記のような法律上の規制に関わらず、
当事者間で合意ができれば当然ながら賃貸借契約を解除したり更新しないことができます

この際には、立退料は大きな意味合いを持ち、場合によってはその額だけが争点となることが多いでしょう。


立退料の相場は?

「立退料の相場はいくらくらいですか?」と、よくご質問を受けます。

立退料に「相場」はあるのでしょうか?
また、どのように考えればよいのでしょうか?

立退料は、状況・事実などで大きく変わります

立退きを求められている側(借主)も、求めている側(貸主)も、
最も気になるのが立退料の相場だと思います。

しかし、相場というものが示しづらいのが立退料の特徴です。

立退料の額は、本来的には立退きの正当事由を基礎づける他の事実と関連して決定されます。
そして、正当事由を基礎づける立退き料以外の事実や程度は実に様々ですから、立退料についても相場というものはいいにくいのです。

経験ある弁護士なら「見立て」を示すことができます

とはいえ、立退き関連の事件を経験した弁護士であれば
「こういう事情やこういう事情があった場合で立退料としていくらが妥当された」
という知見がありますので、
それぞれ事情に応じた見立てを示すことはできます。

ここでは、立退料についての裁判例をいくつかご紹介いたしますので、ぜひ、参考にしていただければと思います。

立退料の最近の判例

裁判事例1(借地の自己使用・居住)

子の家族と同居住宅の建築―賃借人:居宅の敷地
(東京地裁平成17年5月30日判決)
賃貸人は、自らの子らと同居するために三世帯住宅を建築したい一方、賃借人は本件借地の目的を一応達成している上、土地の一部を無断転貸するなど信頼関係破壊事実が存在する場合

当事者賃貸人(X) 個人(寡婦)
賃借人(Y) 個人(寡婦)
賃貸借の開始昭和22年ころ
期間満了平成11年6月30日
目的普通建物所有
地代の額月額1万7550円
(昭和63年7月~)
更新拒絶の時期平成11年8月6日
その他の事情本件土地の一部を駐車場として無断転貸
土地の状況借地面積45坪(契約上)
土地利用の状況木造2階建居宅の敷地。
一部貸駐車場
立退料の額700万円
立退き料の内容借地権価格(1300万円程度)を目安

裁判事例2(借地の自己使用・営業)

借地の自己使用・営業
(東京地裁平成7年2月24日判決)
賃貸人は隣接する土地において新聞販売店を営んでおり、従業員の宿舎等のビルを建築したい一方、
賃借人は本件土地上で明治年間以降印刷業を営んでいる場合

当事者賃貸人(X) 個人・新聞販売店
賃借人(Y) 個人・印刷業
賃貸借の開始明治年間
期間の定めなし
期間満了平成元年3月20日
目的普通建物所有
更新拒絶の時期平成元年5月27日
(昭和63年7月25日更新拒絶)
土地の状況約39㎡
土地利用の状況木造2階建居宅等の敷地
地域の概要浅草橋
立退料6450万円
立退き料の内容更新拒絶時に近い時期の
借地権価格相当額+100万円

裁判事例3(借地の有効利用)

中層店舗ビル―賃借人:飲食店の敷地
(東京地裁昭和62年3月23日判決)
本件土地はJRの駅の至近の商業地にあるところ、賃貸人は自己所有地と一体として本社ビルを建築する必要がある一方、
賃借人は本件土地で飲食店を営んでいる場合

当事者賃貸人(X)法人・不動産賃貸業
賃借人(Y)法人・飲食店経営)
賃貸借の開始昭和41年1月1日更新
期間の定めなし
期間満了昭和61年1月1日
目的普通建物所有
更新拒絶の時期昭和59年5月30日訴え提起
その他の事情昭和34年Yが賃借権を譲り受け、
賃借人の地位を承継
土地の状況本件土地に隣接してX所有地が存する
地域の概要JR○○駅至近の商業地
立退料1億8000万円(現行地代約―年分)
立退き料の内容本件土地の更地価格、
借地権割合その他諸事情を考慮し、
借地権価格の60%相当額

裁判事例4(借家の自己使用・居住)

自己居住―賃借人:居住・ワープロ教室
(東京地裁平成3年9月6日判決)
賃貸人は地方で退職後都内で再就職するにあたって居住する必要があるが、適当な住宅がない一方、
賃借人は本件建物に居住しそこでワープロ教室を営んでいる場合

当事者賃貸人(X)個人・大学医学部教授
賃借人(Y)個人・ワープロ教室経営
賃貸借の開始昭和35年12月28日
家賃の額当初 3万円
現行 6万円(昭和51年5月~)
更新拒絶時期平成2年5月29日
その他の事情
建物の種類・構造木造2階建店舗兼住宅
1階38.61㎡ 2階36.13㎡
建物利用の状況1階店舗部分をYの長女がワープロ教室として使用
2階に居住している。
地域の概要都心部の住宅地
立退料700万円(現行家賃の約9.7年分)
立退き料の内容賃料の差額、敷金・礼金等の一時的支出
及び引っ越し費用の一部

裁判事例5(借家の自己使用・営業)

結婚式場―賃借人:不動産会社の店舗・事務所
(東京地裁平成17年3月30日判決)
賃貸人は本件建物の隣接地で結婚式場を経営し、式場拡大のために本件建物を使用する必要がある一方、賃借人Aは本件土地で不動産管理会社を、賃借人Bは本件土地で不動産媒介業を営んでいる場合

当事者賃貸人(X)法人・結婚式場経営
賃借人(Y1)不動産管理会社
賃借人(Y2)法人・不動産媒介業
賃貸借の開始Y1昭和6年8月ごろ
Y2昭和57年7月22日
家賃の額Y1 当初 不明
  現行 24万1500円(平成12年8月~)
Y2 当初 20万円
  現行 21万4500円(平成12年11月~)
更新拒絶の時期Y1 平成15年1月31日
Y2 平成15年12月3日
その他の事情Y1は、Y2の100%子会社
建物の種類・構造鉄筋コンクリート造6階建
店舗・事務所・居宅のうち4階部分102.47㎡
5階部分102.47㎡
建物利用の状況4階部分はY2、5階部分はY1が賃借使用し、
その余の部分はXが結婚式場サロン等として使用
地域の概要商業地域
立退料Y1 1100万円
Y2 1250万円
立退き料の内容2つの鑑定評価書による
借地権価格、営業損失の補償、移転実費等並びに
X、Yらの事情等を総合的に考慮したもの

立退料の算定方法は?

立退料は、ケース、事情、事実などによって大きく変わって行きます。

では、実際に、立退料はどのように算定されるのでしょうか?

立退料の算定方法を知るためにはその実態がいかなるものであるかを知る必要があります。
立退料のその中身は以下の通りです。

① 引っ越し料

② 新規に賃借する家屋の獲得に要する経費の補償

③ 新規賃貸家賃差額の補償

④ 移転雑費の補償

⑤ 借地権、借家権の補償

⑥ 営業補償

⑦ 建物の買い取り

⑧ 造作の買い取り

⑨ 必要費及び有益費の償還

⑩ 地縁的・社会的隔絶変化に対する補償

⑪ 訴訟の長期化の予防、費用の節約等の見返り

⑤ 借地・借家権の補償が、立退料の本質的部分

「⑤借地権・借家権の補償」は、
これらの権利そのものに財産的価値があるとして立退料に含まれます

借地権の価格は、
借地人が借地を使用・収益し、又は処分することにより生ずる借地人に帰属する経済的利益を貨幣額をもって表示したものとなります。

その内容としては、
(1)借地法ないし借地借家法により保護されていることによる法的保護利益(法的保護利益)
(2)借地人が権利金を支払い原始的に取得した権利価値及び土地の価値の維持(寄与分配利益)
(3)借地権の市場流通により付加される市場の付加価値利益(付加価値利益)

の複合利益であるとされています。

借家権の価格は、
借家人が借地借家法により保護されている事実的支配若しくは法的状態についての法的価値判断に対する経済的評価のことをいいます。

この価格を算定するにあたっては、実務上その状況に応じて多数の算出方法がありますが、同時に算定が大変困難なものとなっています。

このように、その算定には複雑さ・困難性が伴いますが
借地・借家権の価格が、立退料の本質的なもの、ということができます。

①~④は、移転の実費

①から④の立退料は移転実費となります。
(①引越料、②新規賃借の経費、③新規賃借料との差額、④移転雑費)

本来的には借り主にこのような権利は保護されていないのですが、立ち退く以上、移転するのに費用がかかるのは必然であり実費として立退料に含まれることになります。

⑦〜⑨は、立退料とは別の根拠で認められるものです。

⑦借地上の店舗建物の買い取り料
⑧店舗の備品、什器などの造作の買い取り料、
⑨電気ガス水道設備設置のための必要費、内装といった有益費
これらの請求は、
それぞれ立退料とは別の法律上の根拠があるものですが、立退料が問題となる場合には、交渉時点では区別せずに話し合われることも多いです

⑥営業利益は、問題となります

「場所的利益」や「老舗・のれん」「営業権」などといった形のないような利益・・・「⑥営業利益」が補償されるのかは問題となります。

一般に、営業を譲渡するに際し、これらの利益を含む形で譲渡代金が決定されるのが実際の取引界の実情です。
そして、契約終了時における立退料の算定に際しても、この取引界の慣行は十分に考慮されることとなっていますので、営業損失も補償されることになります。
営業利益を貸し主が全く補填することなく立退きを認めることは結論的にも妥当とはいえないでしょう。

この点について、裁判例上は、立退料の算定に際して明確に営業上の損失を意識していないものが多いですが、営業上の損失を補償することを否定したものがあるわけではありません。
したがって、通常、営業上の損失についても補償するのが実務状況といえるでしょう。

⑩精神的損失は、考慮されます

「⑩地縁的・社会的隔絶変化に対する補償」といった精神的損失についても立退料算定に際し考慮した上で補償されることになります。

借り主は、賃貸借期間が長ければ長いほど、地縁的な結びつきは深くなり、またその賃借人にとって一つの地位か買いが形成されていくのが通常ですから、借地・借家を明け渡すということは、これらの地縁的・社会的な結びつきからも隔絶されることであり、それは借り主にとって非常に大きな精神的苦痛であるといえます。
借地借家の正当事由の補強条件としてこれが認められるかは裁判例にも明確なものはないですが、これについても算定に際し考慮されると考えるべきでしょう。

⑪早期解決のための、上乗せ補償

「⑪訴訟の長期化の予防、費用の節約等の見返り」も
期解決に対する上乗せの補償として実務慣行上認められています

賃貸人としては明渡しを求める理由によっては早期解決を求めていることがあるうえ、
裁判となると通常の民事事件よりも長期化し、弁護士費用などの費用がかさむこととなります。
そこで、裁判になって明渡しにつき争うことになればどうせ発生する損害であることから、前もって上乗せして支払うことがあります。

立退料は、事案ごとに判断される

このように立退料の実態は多岐にわたり、複雑なものです。
そして、これらの費用等はすべて回収できるわけではなく、他の正当事由との関係によって算出されます。
たとえば、賃借人が賃料の支払が滞っていたり、無断で転貸したりする場合には減額されることになります。

したがって、一見立退料算定について同様の事例があったとしてもそれとは異なることもしばしばあることから、事案に応じて判断していくこととなります。

交渉のポイントは?

暮らしてきた家・営業している建物からの「立ち退き」を求められたら
誰もが困り、どうしたらいいのか混乱してしまうと思います。

ここでは、立ち退きを求められる側(借主)の交渉ポイントについてお伝えいたします。

貸主に立ち退きを求められた際、
「借主としては立ち退くこと自体を断るのか」
「そもそも立ち退く法的必要性があるのか否か」
を判断する必要があります。

そのうえで、立ち退くのであれば「立退料を争う」こととなります。

突然、貸主から立ち退きを求められた場合、借主としてはどうすればよいのか勝手がわからないのが通常でしょう。
そこで、まずは法的判断も含めて現状を把握することが重要となります。

相手が何を求めているのか、冷静に把握する

交渉の席に着く際には、冷静に、目的を明確にして対処し、
相手方が何を求めているのかを把握するべきでしょう。

けんか腰になったり、
漫然と相手の言うことを聞く

といったことは避けるべきです。

とはいえ、立退きトラブルに遭うことは人生においてあることの方が少ないかと思います。
ですので、弁護士にご相談されるなど、助力を得て交渉するのが最善の解決につながるといえます。

記録に残す

相談される前の交渉やご自身で交渉する場合には、これを記録に残すことが肝要です。

どのような交渉であったかを残すことにより自己に有利になる場合があります。

早めに、弁護士に相談依頼する

立ち退き交渉は住居や店舗といった生活上必須のことについての法的争いですので、
中長期化するのが一般です。

早めに弁護士に相談依頼して対処することをお勧めします。


弁護士法人エースにご相談ください。

弁護士法人エース 成田 翼

弁護士法人エースでは、
立ち退き案件を重点注力業務として取り扱っています。
立ち退き案件について多くの裁判例を研究し、相談時から適切な見立てをたて、親身に相談します。

また、立ち退き案件というのは、貸主と借主の人間関係も含んで争いになることも多く、そういった関係性にも十分配慮して解決を目指します。

立ち退きを求められた借主の方は、まず一度ご相談にお越しください
遠方等でお越しいただけない方も、電話でのご相談が可能ですのでお気軽にお問い合わせください。

相談は無料ですが、ご依頼されないとしてもきっとお役に立てる相談を提供できると思います。

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経済的利益300万円以下の部分26.4%(税込)
300万円超3000万円以下の部分17.6%+26万4000円(税込)
3000万円超1億円以下の部分8.8%+290万4000円(税込)
1億円超の部分4.4%+730万4000円

*最低報酬として26万4000円(税込)いただきます。

*裁判等の場合,1回あたり3万3000円(税込)の期日手当を頂きます。

*ご契約時に,事務手数料1万1000円(税込)を申し受けます。

*内容により,着手金が必要になる等,上記料金体系ではお引き受けできない場合もあります。


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